2011年10月25日火曜日

怖い旅

南アフリカでで知り合った旅人夫婦のブログで知って、衝撃を受けたニュースがある。彼等と同じように長期の世界旅行をしていたとある日本人夫婦が、最近マラリアで亡くなったそうだ。二人とも。
こちらです。

西アフリカのマリでマラリア感染して、南米のボリビアで発症、死亡、ということだそう。
絶対なさそうで超ありえそうなこのニュースに、アフリカと南米を旅したことのあるバックパッカーなら誰しもぞっとしたことだろう。

アフリカから南米、というルートは、日本にいると、世界地図の端っこと端っこになっているので思いもよらないルートにみえるけど、アフリカ→南米、もしくは南米→アフリカ、というのは、丸い地球の上では大西洋を挟んでお向かいなわけで、世界一周旅行をしているような人はよくとるルートだ。
そしてボリビアは国土のほとんどが高山地帯なので、たいていの人が、もし飛行機でいきなりボリビアに入国すると、すぐ高山病の症状でしんどい思いをすることになる。

マラリアは潜伏期間が1~数週間あるので、アフリカで感染、ボリビアで発症、というタイミングになってしまったのは不運中の不運だ。高熱がでるという点でマラリアは高山病に似ているのだ。
その夫婦も高山病だと思い込んで、気付くのが遅れて、手遅れになったそうだ。
これは相当怖い話だ。アフリカの後、南米の高山地帯に入る旅人は、実際いっぱいいるからな。

マラリアは、かかったら絶対病院に行かなければならない。行かなければ死ぬ。
逆をかえすと、適切な対策で予防をし、それでも感染・発症したとしても病院にすぐいけば、死にはしない。
蚊に刺されないようにすること、予防薬をちゃんと飲むこと、熱が出たら即刻病院に行くこと。
薬が効かない原虫もいるらしいが、そうはいってもこの夫婦は、薬を飲んでいたのだろうか?病院にすぐいったのだろうか?マラリアの知識があったのだろうか?
対策すれば死にはしないが、対策しないとあっというまに死ぬという恐ろしい病気、マラリア。エイズにも結核にもないこのスピード感がマラリアの怖さだ。

マラリアのみならず、世界各地、行く場所に合わせていろんな病気がある。
残念ながらマラリアは予防接種で防げるたぐいの病気ではないのだが、予防接種で防げるヤバイ病気はけっこうある。私もかなりの数の予防接種を打って出かけたのだけど、意外なほどに、そういうことをしないで出てきている旅人はたくさんいる。
だめです!予防接種は打ちまくってでないといけない!
しかしその注射がけっこうな値段するので、驚くのだが、私も旅行前の予防接種代は15万ほどした。
でも金で健康が買えるなら、買いましょうよ。
それができないなら、行くべきでない。
ちなみに、私が打ったのは、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎、狂犬病、破傷風、黄熱病だったと思うけど、それぞれ1~3本ずつくらいを打つことになる。少しずつ間をおいて受けないといけないので、全部すませるのに、3ヶ月はかかる。

私は同じ医者に、マラリアも高山病も、日本を出る前に薬を出してもらった。
(ちなみにほんとうはよくないけど、膀胱炎だということにして、抗生物質もだしてもらった。僻地で怪我したら怖いので。)
ちなみに高山病薬は、現地では薬局で簡単に手に入ります。
(マラリアの薬も現地で簡単に手に入るはずだけど、パチもんが多いと聞いたことがあります。気をつけて。)
高山病薬はスペイン語圏だと「Acetazolamida」と紙に書いて薬局にもっていってください。
ただ「高山病の薬くれ」といっただけでは、ただの頭痛薬を処方されます。
こちらを参考に。
そして高山病の薬はかなりよく効きます。
確かに高山病は頭痛も激しいので、頭痛薬の、たとえばバファリンとかとは併用できるので、併用をおすすめします。とても楽になります。

あとついでに言うと虫除けに関しては、現地のもののほうが効きます。
日本の虫除けはDEETという虫除けに効果のある主成分の含有量が低く、アフリカや南米の生命力溢れる虫たちには歯が立ちません。
虫除けはDEETが50%とか90%とか、そういうのを現地で買いましょう。


ところでボリビアで亡くなってしまったその夫婦は、旅行保険が切れていたそうだ。
ひょっとするとそれで病院に行くのを躊躇したのかも知れない。
ギリギリの経済で旅行をしているような人の身にはこれまた超ありえそうな話で怖い。

長旅は、怪我とか病気とか盗難とか、なんかしら「必ず」あるので、旅行保険には「必ず」入っておかなければいけない!旅立った後からは加入できないけれど、更新はできるのです。
もしいまコレをよんでいて、保険無しで世界を長旅している人がいたら、一瞬帰国してでも保険をかけて欲しいと思います。成田でも羽田でも、入れるわけですから。
そして、たいがい、元がとれるほど、なんかしらあります。
(私は、胃炎になったり、パソコンが壊れたり、カメラが壊れたりして、ほぼ元がとれた)

保険のはなしで、ちょっとそれるけど、思い出すだに背筋の凍る自分の失敗を、他の誰かがそうならないように紹介します。
レンタカーで、未舗装路を走ってはいけない!
未舗装路、というものが日本にはほとんど存在しないので誰も気にしていないポイントなんだけど、海外で、レンタカーで事故って、それが未舗装路での事故だと、自動車保険の対象外になる。(ちなみにあらゆる旅行保険において、交通事故はそもそも対象外です。)
そして、アジアも南米もアフリカも、未舗装路だらけ。

日本には、未舗装路なんてものがそもそもほとんぞ存在しないから(たんぼのキワ、竹藪のキワまで舗装してますからね、日本は。)、未舗装路の怖さをわれらは知りません。怖いんですよ未舗装路は。
私はアフリカのナミビアで見事に未舗装路で事故って、事故処理でレンタカー屋ともめて、弁護士をたてて交渉中です。
未舗装路が保険対象外も知らなかったし、未舗装路での運転が相当危険なことも知らなかったんだけど、知らないで運転していたことそのものを、今も猛省している。
でも奇跡的にふつうに生きてたのでホントよかったです。
死んでたら話になりません。

見知らぬ国をレンタカーで走るのはほんとうに楽しい。
あの、まさに、「世界中、どこにでもいける」自由さを一度味わうと麻薬になる。
だから、他の旅人達にもとてもオススメしたいところなのだけど、だけどでも、保険についての知識がなかったり、注意を怠ったりすると、ひどいことになりかねません。
本当に気をつけてください。レンタカー。


マラリアで亡くなった夫婦に話を戻すと、彼等は1年半以上も旅を続けていて、まさに今月10月帰国する予定でいたそうだ。帰国を目前にしてこの不幸。
アフリカからボリビアにたどりついたとき、残りわずかな南米での時間を無駄にするわけにはいかない、という焦りが無理を招いてしまったのでは、と想像してしまう。
彼等がまず入ったボリビアのラパスという街は、南米観光の超ハイライト、マチュピチュの城下町であり、そのあと多くの人が、これまた超ハイライトのウユニ湖をめざす。
そんな超ハイライトを目前にして、しかも残りわずかな南米での日程を思って、正しい行動がとれなかったのではないだろうか。だったらソレまた怖い。
なにしろ南米は見所が多すぎて、みんな焦っているのだから!

もう一つ思いつく怖さは、長旅の人はブログを書いている人が多いということ。
それでみんな、似たような場所にいって、似たような経験をしてくるわけだけど、だからこそ、ちょっとでも他人と違う経験をしようとして、めずらしい体験をネタにしようとして、意識的・無意識的に危険をおかしてしまうベクトルが、常に働いている。
過酷な場所に行って、平気でいられる、というのも武勇伝になってしまう。

ちまたには、旅に出ることを駆り立てるような本がたくさん出ていて、ワクワクすることや刺激的なことがたくさん書いてあるし、世界中を旅する人たちのブログは、まさにいつもワクワクすることや刺激的な経験や、素晴らしい絶景写真で満ち溢れているけど、そうであればあるほど、そのまま危険度の高さの裏返しとらえていいと思う。

旅は怖い。

危険に対する情報収集と対策をおこたらない、緊張感をずっと保つ、そうやっていないとほんとうに何か起こる。

とくに気ままな放浪が身上の長期の旅人は、なんとなくその国その地域にたどりついてしまい、事前の情報収集がおろそかになることが多い。
自分もそうであったことが多々あって反省している。
準備万端、計画的な短期の旅行者とは種類の違う落とし穴が、そこに待っている。

あとはお金。
チープにあげることを追い求めがちなバックパッカーの旅においてはあまり指摘する人がいないポイントだけど、お金がなければないほど我が身を危険にさらす、といっていいと思います。
お金がないならないほど、お金がある人よりも気をつけていないといけない。
ただの旅行者と、ジャーナリストや官公庁・企業の駐在員とでは、情報量とリスク管理のレベルにも天と地の差があるといっていいと思う。これは金だけの問題ではないだろうけど大半が金の問題だろう。

とにかく、旅は怖い。

私自身の軽率な行動のいくつかを後々思い出して、ぞっとずることがよくある。

旅の危険を警告したいと思ってつらつら書いていたら、いろんなことに話題が及んでしまって随分とっちらかってしまったけど、あらためて、旅の怖さを認識させてくれた、ボリビアで亡くなってしまったご夫婦の冥福を、祈ります。

みなさんもどうぞ、お気をつけて。

2011年10月5日水曜日

韓国

どうでもいいんですが、さっきコンビニで、雑誌でも読も、と思ったら、ほとんどすべての女性誌がおまけ付きでゴムでしばられて立ち読みできない状態だった。驚愕。
しかし女ってポーチとか好きだよねー。
なぜかうちにも捨てられないポーチや意味不明の小袋が山のようにあるよ。旅行とかでいつか訳に立つだろうと思ってとっておくわけだけど、結局旅行で一番使えるのはジップロック大中小だったりするんだよね。。

む、前置きが長くなった、さて今日の写真は最近なにかと話題の韓国から。
これは韓国軍に徴兵中の男子たち。
別に写真撮ってくれって頼んだワケじゃないのに囲まれてしまった。
君らゆるいんじゃないの、北はもっとど必死やで!
いろんな意味でシュールな写真のように思いますがいかがでしょう。

韓国には博多から高速船で釜山へと渡ったのだが、これがけっこう楽しい。
船で外国にでかけるなんて超新鮮だし、船に乗ったとたんに、いきなり一番搾りが免税で150円とかで売られているので一気にテンションがあがります。
途中対馬を横目にすすんでいくのだが、対馬って結構でかいんだよ。
淡路島よりでかいんだもんびっくりするわ。
あんなでかい島が日本と韓国のちょうど真ん中にどどーんと横たわっているなんてそういえば驚き、と思いながら容易に想像できるその容易ならざる歴史に思いをはせたりしていつかいってみようと妄想しているうち、ものの2、3時間で釜山についてしまうのがなんだか惜しい船の旅です。

韓国で何がいちばんおもしろいかというとやはり板門店ツアー。
いきなり極東情勢の緊張に触れられるのでいろんな意味で刺激的です。
ちなみに板門店はまさに最前線なので上の写真のようなたるんだ男子ではなくバキバキでバリバリの大本命エリート兵達が勤務しているぜ。

韓国でもう一つ、個人的に超オススメなのはコジェ島。ソレについてはこちらをドウゾ。

ところでソウルで韓国人の友達と話をしていて印象的だったのは、韓国がいくら成長を遂げたとはいえ、なんだかんだ言って経済大国であり軍事大国である日本がもうちょっとこの地域で積極的なリーダーシップをとってくれないと困る、というようなことだった。北は何するかわかんないし、中国はやりたい放題だし、米軍はぜんぜん帰ってくんないし、というような。。
それともう一つ印象的だったのは、韓国の若者はもうだいぶ北に関して無関心になってきているという話。ふーむ。

韓国に関してもう一つ興味深い話は、これは在日韓国人の旅人から聞いたのだけど、日本に住んでる在日の人たちは、南北に別れるとっくの前から日本に根を下ろしていたので、むしろ朝鮮民族全体としてのアイデンティティがいまだに保たれている、という話。
在日朝鮮人の人が、海外旅行を思いついてパスポートをとることを考えたら、世界中どこにも行けない北朝鮮のパスポートを持っていてもしょうがないので、韓国籍として韓国のパスポートをとるわけだけど、それはあくまでも便宜的な行動で、北の人間だ/南の人間だ、というアイデンティティの主張にもとづくわけではないという話。
その旅人曰く、世界のあちこちでパスポート(韓国パスポート)を提示するたびに「お前は北か南か」とよく尋問されるらしいのだけど、彼らにとってはそもそもその質問のスジがビミョーに間違っている、ということ。
(つまり「いや南北に別れる前に日本にいっちゃってたんでほんとはどっちでもないんすけど」というマインドセットだとおもう)
ちなみに在日の人は日本に帰化する(日本の国籍をとる)という選択肢もあるだろうが、そうしない場合、(帰化しないことのメリットはあまり思いつかないから)これはやはりアイデンティティの問題なんだろうね。

国とか国境線とか国籍とか民族とかアイデンティティとかそういうものは一見強固なもののように思うけど、よく見つめるとナンの実態もない頼りないモノで、いろいろ考えているうちにむなしくなるんだが、そういうときは般若心経をとなえましょう。色即是空空即是色。
今日は以上です。次は中国について書く。